第428号~お待たせしました! 研修会を開催いたします。大勢のご参加を! そして、旧優性保護法について考えてみたいと思います。~
2023 / 11 / 20 ( Mon ) 本誌9月号でもお知らせいたしましたが、近い将来、大きく変わるであろうと言われている「成年後見制度」について、全国手をつなぐ育成会連合会(以下:全育連)の又村事務局長兼常務理事をお招きし、お話ししていただきます。ご案内を本誌最終の12ページ(クリーム色用紙)に掲載しておりますのでご覧下さい。
この制度は、知的障害者にとって、金銭管理や契約の代理、そして身上保護など「親なきあと」を含めた本人の権利擁護の観点からは、大変重要で且つ必要不可欠な制度ではありますが、課題も多く、制度利用は極めて低調です。 そこで、全育連では、全国組織というスケールメリットを活かしたアンケート調査を実施、2021年度に、その報告がまとめられました。 それによりますと、制度の認知度は80%以上と非常に高い反面、実際に利用している人は10%程度に踏みとどまっているという状況で、実に90%もの人が利用には至っていないという結果が示されました。 その理由としては、①一度制度を利用すると止めることが出来ず、後見人の変更も出来ない。②財産管理が主であり、肝心の身上保護が不十分である。③多くの知的障害者の収入源が障害基礎年金である中で、月2~3万円の報酬設定は大きな負担となる。④本人の意思を十分に尊重していない後見人がいる。等が挙げられました。 一方、国では、平成28年に施行された「成年後見制度 利用促進法」に基づき、専門家会議を設置し、運用の改善を進めているところです。 この会議を含む関連の会議には、全育連の久保顧問(前会長)が委員として参画し、知的障害者の間で利用が進まない背景をアンケート結果に基づき説明する等、かねてより制度の改善を提言してこられました。制度を改善するためには民法の改正が必要となりますが、今後は、民法の改正も視野に入れた抜本的な改善が行われるものと思われます。 そのあたりについて、又村さんには、①成年後見制度の概要 ②現行の成年後見制度は何が課題なのか ③成年後見制度見直し議論の方向性 ④結局、何がどう変わりそうなのか ⑤制度の見直しは何年先になるのか・・等、大きく見直されることが確実な成年後見制度について、現行制度の概要と課題も交えて詳しく、そして、分かりやすく解説していただきます。 当会で制度を利用されている方は、10%にも満たない、おそらく一桁程度ではないかと推察します。しかし、保護者の高齢化は待った無しで進んでおり、制度の利用が急がれます。 何よりも使いやすい制度となることを期待したいと思います。 研修会は、12月26日(火)です。年末の押し迫った時期で、お忙しい事かと思いますが、大勢のご参加をお待ちしております。 次に、全育連からのお願いです。旧優性保護法裁判(強制不妊裁判)が、最高裁の大法廷で審理されることが決まりましたが、全育連では関係団体と連携し、公正な裁判を求めるための署名活動を展開することとなり、各育成会に対して協力依頼がきております。 「旧優性保護法」とは、戦後の出産ブームによる急激な人口増加を抑制することなどを目的に、昭和23年に制定された法律で、精神障害や知的障害のある人は、本人の同意がなくても強制的に不妊手術を行うことが認められていました。当時、障害や疾患は、遺伝すると考えられていたことが背景にあり、法律の条文には「不良な子孫の出生を防止する」と明記されていたのです。 「旧優性保護法」とは、まさに、「障害者は産まれてくるな」という差別的な思想から生まれた法律であり、平成8年の「母体保護法」へと改正される48年間という長きにわたって存続し、そして、この間、多くの障害者たちが不妊手術を強制されてきたのです。 5年前、知的障害のある宮城県の女性が「強制不妊手術は、差別的思想に基づくもので憲法に違反する」などとして国を訴える裁判を仙台地方裁判所に初めて起こしました。それ以来、同様の裁判が全国各地で起こされています。 これまでの判決では、多くの裁判所が、「旧優性保護法」については憲法違反と判断したものの、賠償の部分は、20年が過ぎると権利がなくなってしまうという「除斥期間」が適用されるのか、或いは、されないのかの判断で分かれており、上記の仙台地裁の判決は「除斥期間」が過ぎているとして、原告の賠償に対する訴えは退けられました。 その後、各地の裁判所でも、時間の経過を理由に原告の敗訴が続きましたが、昨年2月に大阪高裁が初めて国に賠償を命ずる判決を言い渡すと、その翌月には東京高裁も、「除斥期間」を適用しないという判断をして、国の賠償責任を認めました。 それ以降、本年3月には札幌高裁が、続いて、大阪高裁が別の裁判においても、「除斥期間」を適用せず、国の賠償責任を認めたのです。 しかし、全国で初めて提訴し、一審で敗訴となった仙台での裁判については、本年6月、仙台高裁が訴えを再び退けました。原告側は最高裁に上告しています。 高裁で判決が出され上告されている上記5件(札幌、東京、大阪2件、仙台)の裁判については、最高裁判所の大法廷に15人の裁判官全員が参加し、5件について審理されることが決まりました。今後統一した判断が示される見通しとなっています。 非常に長い説明になってしまいましたが、ご理解いただけましたでしょうか? 全育連からは、この最高裁での裁判についての署名にご協力くださいというお願いです 「旧優性保護法」は、産まれる子供の数を減らすからには、健康な子供だけが産まれるようにしよう、従って、障害者には子どもを産ませないという、まさに「優性思想」に則り策定された法律ですが、当時、障害のある家族や福祉関係者の間では、「障害者の結婚、特に子育てには大きなリスクを伴う」、また、「女性障害者の望まぬ妊娠を回避する」という違った観点から、この法律を容認する傾向があったとも言われております。時代背景を考えると致し方ないかもしれませんが、しかし、「旧優性保護法」という人権を侵害する法律が長きにわたり存続した事実こそが、現在も無くならない「差別や偏見」を作り出す要因になったと言っても過言ではありません。 「旧優性保護法」は無くなりましたが、私たちを震撼させた「津久井やまゆり園事件」等、「優性思想」は、まだまだ人々の心の中に根強く残っています。そういった意味合いからも、「強制不妊手術」の問題は、手術をさせられた障害者だけではなく、障害のある人全体の問題であると考えるべきではないでしょうか。大変に重要な局面に来ております。研修会当日は、是非とも多くの署名のご協力をお願いいたします。 (会長 後藤 久美子) スポンサーサイト
|
第427号~日中活動の場を探している方は、一度体験してみませんか! そして、随分迷いましたが、やはり書くことにしました。~
2023 / 10 / 22 ( Sun ) まず始めに、日中活動の場を探している方々へ、「親子体験(在宅者)事業」のお知らせです。
これは、当会が母体となって設立した「社会福祉法人 新緑福祉会」が運営する法人内の各事業所において、親子で1日体験していただくという事業です。 夏休みには、支援学校高等部の方を対象に受け入れを行いましたが、多くの方にご参加いただき、好評を得ることができました。 高等部をすでに卒業された「在宅」の方については、年間を通した受け入れを行っております。事業所を退所した、就職していたが離職した等で、現在、在宅であるという方はもちろんですが、新緑福祉会の事業所の体験を一度してみたいと言う方等、ぜひご参加いただけたらと思います。 詳しくは、6~7ページに掲載していますので、ご覧下さい。 次です。今月号のメインとなります。今年の夏は、異様なほど暑かったですが、暑い最中に、神戸市西区で起きた「6歳児死亡事件」について触れたいと思います。 この事件は、「身近な神戸市で起きた」、「容疑者は全員知的障害者」ということから、新聞やテレビ等、マスメディアを通して、ご覧になった方も大勢おられることと思います。 8月末、「守れなかった命」と題して、神戸新聞誌上において特集記事が組まれ、数回にわたって掲載されました。その記事を中心に事件を振り返り、考えてみたいと思います。 現在、神戸市では、なぜ、穂坂修(なお)ちゃんを救えなかったのか、事実の把握や発生原因の分析、そして必要な再発防止策を検討するため、外部の有識者による第3者委員会が進められています。非公開のため進捗状況は分かりませんが、メンバーは大学の先生、社会福祉士である弁護士、小児科医、科学警察研究所 犯罪行動科学部部長と、多分野の方々で構成されています。 修ちゃんの母親の沙喜容疑者は、特殊な家庭環境で育ちました。沙喜容疑者を含む兄弟姉妹5人は全て知的障害者で、療育手帳を所持していました。 当初、5人は母親と共に、神戸市垂水区の団地で暮らしていたそうですが、母親からは家庭内で、日々虐待を受けていました。特に、その対象になったのが、長女の沙喜容疑者、次男の大地容疑者、そして、その間にいた長男です。(大地容疑者の下の双子の姉妹についての情報は殆どありません。また、長男は、その後、家を出て暮らしています。) 母親(修ちゃんの祖母)の虐待は凄まじく、①身体的虐待…棒で身体のあちこちを殴る、煙草を押し付ける等で、歯が折れて歯肉に刺さっていたり、手がグローブのように腫れあがっていたこともあった、 ②心理的虐待…怒鳴りつける等、 ③ネグレクト…母親は留守が多く、家事は沙喜容疑者が担っていた、1週間同じ服を着て、学校では臭いといじめられた、服はボロボロ、冬でも半袖半ズボン等、 ④経済的虐待…母親はパチンコによる浪費等を長きにわたり行っていた・・・というように、「障害者虐待防止法」の5類型のうち、実に4類型の虐待が、穂坂家では、日常茶飯事にわたり行われていました。 父親は不明で、一人親世帯です。全員が生活保護を受けていて、障害基礎年金も受給していたそうですが、しかし、母親のパチンコ癖が原因なのか、困窮世帯で、ガスは早くから止められていました。そして、部屋の中はゴミ屋敷状態、母親は玩具代わりに、うさぎ等の様々な生き物を子供たちに与え世話をさせた、しかし、子供達だけでは充分な世話が出来ずに死んでしまう、結果、たくさんのゴミや糞尿の臭いと共に、死骸がもたらす悪臭が散乱し、近所からは多くの苦情が噴出、家族は団地を追い出され、事件が起こった神戸市西区に転居したのです。 家庭養育力が極端に低く、複合的リスクを抱えていたこの一家を、そして、劣悪で過酷な環境で育った兄弟姉妹を、どうして誰も救うことができなかったのでしょうか。 修ちゃんを殺め、加害者となってしまった4人ですが、同時に、間違いなく被害者でもあったのです。「彼らはたまたま死ななかっただけ・・」と言う、近所の方の言葉が、全てを物語っています。30年前に、もし、彼らを救うことが出来ていたら、何らかの支援があれば、修ちゃんの痛ましい事件は起こらなかったと思います。 修ちゃんの事件については、「こども家庭局」が矢面に立たされていますが、30年前、「児童担当」はもちろん、子供たちが最初に一歩踏み出した学びの場である「学校教育」、そして、「障害福祉」、この三者が連携し、この家庭を支援することが何故出来なかったのでしょうか。 正に「縦割り行政」の弊害なのかもしれませんが、何故、この様な家庭を放置していたのか、そして何故、兄弟姉妹を救えなかったのか、修ちゃんの事件と同じく、第三者委員会を設置し、検証することを強く望みます。 4人は殺人容疑などで逮捕され、兵庫県警による慎重な聴取が進められているそうですが、「迎合性」があるとして、4人の供述内容は、なかなか表に出ていません。供述内容がコロコロ変わり(知的障害者の「あるある」ですが)、県警も手を焼いているということだと思います。 そして、現在、刑事責任を問えるか否かを判断するための鑑定留置が続いているそうです。 殺意や、責任能力や、善悪の判断、これらが容疑者達にあったのか否かが問われ、有罪、或いは、無罪の結論が出されるものと思われます。 事件発覚直後からインターネット上では、知的障害者に対する差別偏見に満ちた書き込みが後を絶ちませんでした。結論が出るまでには、かなりの時間を要すると思いますが、どちらの結果になったとしても、「やまゆり園」事件以上の根強い差別偏見の書き込みが拡散すると思います。何故なら、今回は、被害者ではなく、加害者の立場にあるのですから・・・。 最近のニュースは、ジャニー喜多川氏の性加害問題で持ちきりで、人権擁護、児童養護という事が盛んに言われています。被害にあった当時の少年たちは、遅まきながら声をあげる事が叶いました。やっとヘルプサインが出せる環境になったのです。 穂坂家の兄弟姉妹は、知的障害ゆえに「助けて」と声をあげることは出来ませんでした。 大地容疑者のエピソードですが、横断歩道の前で座りこんでいた小学生の頃の彼は、登下校の際に、見守り活動をされていた保護者の手や腕に数回かみついたことがあったそうです。 その方は、「学校にも行きたくないし、家にも帰りたくない。そうした行動でしか意思表示が出来なかったんだと思う」と述べておられます。 この行為こそが、大地容疑者の「助けて」というヘルプサインであったと思います。もう一度繰り返します。なぜ修ちゃんを救えなかったのか、そして、なぜ穂坂家の子どもたちを救えなかったのか、神戸市はこの事実を重く受け止め、この教訓を活かしたシステムをつくり、全国に発信していただきたいと思います。二度とこんな事件を起こさないために。(会長 後藤久美子) |
第426号~今月号は、いろいろな催し物を紹介します。 感染症対策を取りつつ参加されてみてはいかがですか!~
2023 / 09 / 19 ( Tue ) 新型コロナウイルスの感染者が国内で初めて確認されたのは、2020年1月でした。
当会では同年2月末に、会員さんと、限られた来賓の方のみにお越しいただき、何とか対面での予算総会を行いましたが、しかし、その後は、新型コロナウイルスの感染拡大により、書面決議で実施の総会を除いては、皆で集まって行っていた様々な活動が出来なくなってしまいました。 それから3年余りが経過し、ゴールデンウイーク明けの本年5月8日には、コロナウイルスも、感染症法上の位置づけが、季節性インフルエンザと同じく5類に変更しましたが、決してコロナが終息した訳ではなく、最近では、障害のある本人や家族、また、職員が、重症化はしていないものの、罹患したという声もチラホラ聞こえてきます。 更には、最近では、新たな変異株の報告や、加えて、咳止めや抗生物質等の風邪薬が足りない等という地域もあったりと、予断を許さない状況となっております。 全国的にみると、5月の5類変更時よりも、現在、感染者は増加傾向にあるとも言われておりますが、そんな中、当会では、引き続きの十分な感染対策を取りながら、久方ぶりに大きな行事を行いたいと考えております。 まず、一つ目は、実に、2019年12月以来となる研修会のご案内です。 テーマは、やはり、育成会にとっての永遠の課題であり、皆さんが一番不安に思っている「親なきあと」で、講師には、全国手をつなぐ育成会連合会(以下:全育連)の事務局長・常務理事の又村あおいさんにお越しいただきます。 コロナ前、又村事務局長をお招きし、毎年シリーズで、様々な観点からの「親なきあと」をテーマにした研修会を実施しておりましたが、特に、今回は、数年先に大きく変わるであろうと言われている「成年後見制度」について、お話しいただきます。 「成年後見制度」は、知的障害者が親なきあとも地域で暮らしていくためには、大変重要な制度ではありますが、使い勝手の悪さから、会員さんの中でも、なかなか利用には至っていないという方が多いようです。 そこで、全育連では、会員を対象に「成年後見制度」に関するアンケート調査を実施しましたが、それによると、制度の周知不足により利用を控えているという訳ではなく、「一度、制度を利用するとやめることが出来ず、後見人等の変更も出来ない」や、「財産管理に重きが置かれて、身上監護が不十分、しかし、その割に報酬が高い」という様な具体的な課題が挙げられました。 国では、平成28年に施行された「成年後見制度利用促進法」に基づき、専門家会議を設置し、昨今、運用の改善を進めているところです。 この会議には、全育連の久保・前会長が参加しておりますが、知的障害者の間で利用が進まない背景をアンケート結果に基づき説明し、制度の改善を提言しました。しかし、制度を変えるためには、民法の改正を伴うため、今しばらく時間を要しますが、改善に向けて動き出しており、今後、大きく変わる可能性があるということです。使いやすい制度となることが期待されます。 そのあたりの詳しい中身について、又村さんに、例によって、分かり易く話していただきます。 日程については、年末の押し迫った時期にはなりますが、12月26日(火)10:00より育成会会館4F会議室で行います。 まだ、少し先にはなりますが、是非とも予定に組み込んでいただきますようお願いいたします。ご案内については、10月号か11月号の本誌にてお知らせいたします。乞うご期待を! 次です。こちらも、長きに渡りお休みしていた事業が再開されます。OS株式会社さんからの映画のご招待です。9~10ページに掲載しておりますので、ご覧下さい。 OS株式会社さんは、「阪急阪神 未来のゆめ・まちプロジェクト」の一環として、“誰もが映画を楽しみ、感動を分かち合える社会の実現”を目指し、平成21年5月より、障害のある本人と、その家族を招待した映画上映会を開始して下さいました。 当会では当初よりご招待いただいておりましたが、今回の上映は実に38回目となるそうです。 上映される映画は、2022年に公開された「ミニオンズフィーバー」で、日本語の字幕と吹き替え版での上映となっております。また、劇場内の照明は明るめで、音量は控えめにするなど、知的障害者に配慮された環境になっておりますので、安心してご覧いただけることと思います。 観覧希望者は、育成会事務局までFAXにてお申込みください。 次です。近畿2府4県2政令市の育成会が持ち回りで実施している「近畿大会」のご案内です。 この大会もコロナ禍で開催できない年もありましたが、一昨年より、ハイブリッド開催(現地参加は地元のみ+オンライン配信)が始まり、今年度も同じ手法で滋賀県守山市で開催されます。 本大会では、障害のある本人と、その家族(きょうだいや親)が自分らしく幸せに生きていくためにはどうすればいいのか、様々な観点から考えていきます 当日の現地参加については、以前のように観光バスをチャーターして出席ということは出来ませんが、オンラインによる視聴は可能です。詳細は5ページをご覧ください。 次です。早いもので、もう7回目となる「第7回こうべ障がい者芸術フェスタHUG+(ハグ・プラス)展2023」の案内を7ページに掲載しています。 この催しについては、実際に作品を出展されたという方もおられるでしょうし、皆さん、よくご存じとは思いますが、優秀作品だけでなく、応募されたすべての作品が一流の美術館に展示されるということで、今回は、約520点の応募があったそうです。 9月23日(土・祝)が最終日となっており、日程的にはタイトとなりますが、斬新で素晴らしい数々の作品はもちろん、もしかすると、お知り合いの作品があるかもしれません。 興味のある方、また、ご近所の方は、是非とも足をお運びください。 ご案内は以上となります。冒頭にも記載しましたが、新型コロナウイルスの感染は未だ続いております。いろいろ企画はしておりますが、感染状況によっては、もしかして中止となることもあるやもしれません。5類に移行したと言っても、なかなか終息には至らず、当分の間は感染者の増減が続くものと思われます。コロナ前の日常生活が少しづつ戻ってきているようですが、更に推し進めるためには、一人一人が、その場に合った感染対策を行うことが重要であると思います。研修会や、映画上映会には、マスクの着用を是非ともお願いいたします。 最後に・・・、今年も、神戸市に対して要望書を提出しました。11~15ページに掲載しておりますのでご覧下さい。新規の要望事項として、「親なきあと」のみに特化した「親なきあと相談室」の設置を掲げました。実現すれば素晴らしいですね。 (会長 後藤久美子) |
第425号~「障害者差別解消法」次年度から少し変わります。この法律について考えてみませんか~
2023 / 08 / 20 ( Sun ) 「障害者差別解消法」、皆さん、覚えていますか? この法律は、「全ての国民が障害の有無によって分け隔てられることなく、相互に人格と個性を尊重しあう」という理念のもと、共生社会の実現を目指すため2016年4月1日に施行されましたが、2024年4月1日から一部改正され、「改正障害者差別解消法」として施行されます。 改正される個所は、現在、「努力義務」となっている民間事業者の「合理的配慮の提供」が、改正法では、行政等と同じく「法的義務化」、つまり「義務」となるのです。 それに先立って、神戸市では、来年度より義務化となる店舗(スーパー、レストラン、百貨店、ショッピングモール)等の合理的配慮の提供に関して、困ったことや、この様に配慮してもらえると助かる等の事例を募集しています。8ページに掲載しておりますので、まずは、ご覧下さい。 「障害者差別解消法」が施行されてから、早いもので7年経過しました。その成果について、障害者に対して行われた実態調査を見ると、「視覚」「聴覚」「肢体」「精神」「内部」等の障害をお持ちの方からは評価する声も多く聞かれ、合理的配慮についての好事例も多数発信されているようですが、こと「知的障害」に関しては、合理的配慮についての好事例を目にしたこともありませんし、同法施行後の成果についての調査でも、「社会は何も変わってない」「差別は存在するし、合理的配慮を受けたこともない、成果も感じられない」等の声が圧倒的に多いようです。 他の障害のある方々は、この法律をそれなりに評価しておられるにも関わらず、知的障害者は、法施行の意義も成果も感じられない・・、この様な温度差が生じるのは何故なのでしょうか? 法が施行された当初から言われていたことですが、「知的障害者の困りごとは周りから見えづらい」、他の障害の方と違い、「本人自らの意思表明が難しい」、また、保護者も「障壁(バリア)となっている困りごと除去」のための意思表明には消極的である等の原因が考えられます。 しかし、「何をしてほしいのか、何に困っているのか」を訴えなければ、周りの方は理解できませんし、これからも何も変わっていきません。知的障害者にとって、「障害者差別解消法」は、年月を経過しても、いつまで経っても、「絵にかいた餅」状態となってしまうのです。 今まで、色々な場面において、「障害があるということで困ったこと」、「この部分をこう改善、または手助けしてくれたら助かるのに」や「こうしてくれたから助かった」等、どんなことでも結構です。振り返ってみて、そんな経験があったという方は8ページの用紙に記入し、9月8日(金)までに、事務局まで、ファックス、または郵便でお寄せ下さい。 「合理的配慮」に関する好事例や要望を積極的に発信していくことが、同法が、知的障害者にとっての活きた法律となる一番の手立てとなります。ぜひ、皆さんの声をお聞かせください。 いつもよりコンパクトですが、今月号はここまでとさせていただきます。(会長 後藤久美子) |
第424号~全国手をつなぐ育成会連合会の新会長が誕生しました! そして、エレベーター設置か否かで名古屋の街が揺れてます。~
2023 / 07 / 20 ( Thu ) まず初めに、全国手をつなぐ育成会連合会(以下:全育連)の会長として、長年ご尽力下さった久保厚子会長が、この度、会長職を退任されました。
新会長の選任については理事会での互選となっておりますが、去る6月29日(木)に開催された理事会において、全育連の副会長で、東京都育成会理事長の佐々木桃子さんが選任されました。佐々木さんは、引き続き行われた総会において承認され、正式に全育連の会長になりました。そして、久保・前会長については、理事会での承認と、新会長の指名により「顧問」として就任されることになりました。 振り返ると、久保・前会長は、全育連の前身である「社会福祉法人 全日本手をつなぐ育成会」(以下:全育成)の時代から会長を務めてこられました。 その後、社会福祉法人の制度改革に伴い、会の実情に合っていなかった「法人格」を返上し、また長年にわたる労働争議も決着させ、そして、新たに一般社団法人格の取得、加えて、東京事務所の開設と、「全育成」から「全育連」への激動の時代を、トップとして常に私たちを牽引して下さいました。 佐々木・新会長は、そんな久保・前会長を「第1副会長」として支え、苦楽を共にしてこられました。また、東京都育成会の理事長という立場から、国・行政や、中央の関係機関の方たちとも精通しておられ、正に、新会長として適任である方だと思います。 全国の育成会では、昨今、会員減少や保護者の高齢化等、課題は山積しておりますが、新体制のもと、私達会員は心を一つにし、全育連の灯を消すことなく、盛り上げていきたいと思います。 次です。地下鉄新長田駅では、老朽化に伴うエレベーターの更新工事が行われ、改札階とホーム階を結ぶエレベーターが利用できなくなるそうです。 停止期間は令和5年7月20日(始発)から、10月18日(終電)までとなっております。詳しくは、8ページをご覧下さい。 次です。そのエレベーターを「つける、つけない」で、名古屋の街は喧々諤々としています。 報道等で、ご存じの方もおられるかと思いますが、名古屋市が復元を目指す名古屋城木造天守のバリアフリー化をめぐり、市が主催した市民討論会の席で、エレベーター設置を求める身体障害のある男性に対し、他の参加者からの差別的発言があり、波紋が広がっています。 「史実に忠実な名古屋城の復元を目指す」という名古屋市の構想案では、天守閣最上階までのエレベーターは設置せずに、地階(天守閣の石垣内部)から1階まで、車いす利用者と介助者が利用できる小型昇降機を導入するというものです。 これに対し、車いすの男性は、「名古屋城や大阪城はエレベーターで上がることができる。今まであったものを失くしてしまうのは、障害者が排除されているようにしか思えない」と、最上階までのエレベーター設置を訴えました。 これに対し、エレベーター不要の参加者からは、「市長がつくりたいのは、エレベーターも電気もない時代のものを再構築するという話だ。図々しい、我慢せい」との発言があり、そして、次に発言した男性は、身体障害を侮辱する差別用語を使った上で、「平等とわがままを一緒にするな。エレベーターは必要ない」と言ったそうです。しかも、この二人の男性が発言した後には、会場の一部から拍手が沸き起こったそうです。 この討論会には、当然のことながら、河村市長はもちろん、市職員も参加していたそうですが、誰一人として発言者に対して、差別発言の制止や注意をしなかったそうです。 しかし、その2日後の定例会見で、市長は「差別的な発言については自分は聞こえてなかった、市民が自由に発言する場なので自由に発言するのが原則と思うが、差別発言があったとすれば、発言には充分お気をつけ下さいと言うべきだった。申し訳なかった」と陳謝したそうです。 その後、市役所前で、障害者団体による抗議集会が開かれたり、また市議会からも「討論会は、障害者へのいじめの場所になっていた」と、市の対応への批判が相次いでいることから、市では、バリアフリー化案(エレベーター設置の有無)の最終決定を見送って、まずは差別発言問題への対応を優先することとなり、外部有識者を含む、庁内のチームを立ち上げ検証することが表明されました。結論が出るまでには1年程度かかるそうです。 そもそも、この問題が勃発したのは、河村市長が「観光の目玉」として、現在のコンクリート天守を取り壊して、1945年に空襲で燃えた「国宝」名古屋城を木造で再建しようと言い始めた10年前からです。当初は多くの支持を受けていたそうですが、石垣の劣化をはじめ、様々な課題も多く、また、それ以前の問題として、「観光客を入れる」のであるならば、当然のことながら、耐震・耐火性が求められ、安全性は絶対条件となります。従って、市長の言う「江戸時代のままの再現」は、実は不可能だったのです。 そこで、名古屋市が考え出したのは、「ハイブリッド」構造の木造建物で、補強を加え、燃えにくい工夫もし、スプリンクラーや、史実には存在しない階段を非常用に追加し、電気も引くというもので、決して江戸時代のままの「完全復元」ではなかったのです。 しかし、こういった根本的な構造上の問題を市民には知らせず、ただエレベーターをどうするかという質問に固執し過ぎたため、まるで「エレベーターのみが復元を妨げるものだ」と思い込んだ市民から、「障害者は我慢しろ」などという差別発言が出たり、また、それを正論であるかの如く擁護する人が出てきたのではないかと思います。 市長が望む「観光施設」として新たに造られるからには、バリアフリーは世界の常識です。 どういう城を造るべきなのか、或いは、莫大な費用を要する木造再建が本当に必要であるのか、この度の差別発言の検証に、1年近く費やすということですので、この間に、市民の皆さんは、じっくり考えていただきたいと思います。 最後にお知らせが三つあります。①当会会員が株主となり設立した「株式会社いくせい」が、会社説明会を行います。会員さんの中で、「働きたいけど、一般企業は心配」と言う方、また、在宅で活動の場を探しているという方、一度参加されてみてはいかがですか? 詳しくは6ページをご覧ください。 ②以前から、全国手をつなぐ育成会連合会が行っている保険のお知らせを7ページに掲載しています。加入者が多くなるほど、保険料はお安くなります。ご一考のほどを! ③お待たせしました。兼ねてより準備をしてまいりました重度高齢化対応のグループホーム「仮称:第2えみのき」ですが、この度、国庫補助金の内示がありました。建設に向け、具体的な動きに入りたいと思います。ご支援ご協力をお願いいたします。 (会長 後藤久美子) |