第295号 人と人の間
2012 / 06 / 09 ( Sat ) 財団法人 神戸新聞厚生事業団
理事長 江本 幸仁 爽やかな薫風が新緑の輝きを目覚めさせ、にっこりほほ笑むお日様の温もりに心和む季節となりました。 少し街から足を運んだ山の麓には鶯の声も聞こえてきます。大きく息を吸って外へ飛び出して下さい。 手をつなぎ共に歩んで行くと日々の移り変わりが力となって心が動きだします。 自然は何事もなかったかのように時を進めていきますが、「三.一一」大地震で傷ついた地域の時計は止まったままとなっています。目に見える形で復興を感じることなく多くの問題を抱えながらの被災者の生活を思うと、心の痛みを感じずにはいられないのは、わたしだけではないでしょう。日本中が、原発、放射能汚染への関心が高まり、根っこにある「震災」を忘れていないでしょうか。一度、原点に戻り、東日本大震災の被害や今後について振り返りたいものです。 福祉の仕事に携わり、やっと一年が過ぎました。以前の三年は、神戸新聞淡路総局を預り、編集、営業、販売はもとより、地域の子どもたちを中心に、スポーツと文化の向上(そんなに格好いいものではありませんが)に奮闘、自身としてはたくさんのことを学びました。そんな中でも家族の存在を強く感じました。 選手や演奏者、作品発表などで活躍できるのは、お父さん、お母さん、兄弟姉妹がいて毎日の生活が息吹いたものとなるからでしょう。朝ごはんを作り、車で事業会場まで送迎、大声で応援…、家族それぞれの笑顔と涙が成長への糧となっていたと実感しました。 三年の歩みを財産に、「福祉」の充実を思うにつれ、人と人との関わりの大切さを感じずにはいられません。出会いがあり、出会いがそのまた出会いを招いて新しい広がりになります。たくさんの施設の人たちにお会いして、さまざまな仕事に携わり老弱男女の垣根なく従事される労に頭が下がる思いです。それぞれのセクションごとに見えない壁があり、壁を乗り越える取り組みをしている人たちの努力を知り、己の軟弱さを痛感することもしばしば。たのもしい若者たちの姿に美しさを覚えます。 さまざまな壁を乗り越えようと努める人、隣の人、それを支えあう人、仲間たちにエールを送ります。 最後に、紹介したい短歌があります。 「たわむれに 母を背負ひてそのあまり 軽きに泣きて 三歩あゆまず」(啄木) くれぐれも、大切なことは、後回しにしないで下さい。 スポンサーサイト
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