第349号~障害が限りなく軽減される時代の到来? UDフェアーへ行ってきました~
2017 / 04 / 23 ( Sun )
 暦の上ではとっくに春だと言うのに、今春はなかなか冬物を手放せないほどの季節外れの寒さが続きましたが、新しい年度を迎えるや否や、ようやく春らしくなってまいりました。60周年にグループホーム建設等、育成会にとって、大きな歴史の1ページを刻むこととなる平成29年度のいよいよ幕開けです。
 さて、吹く風には多少の冷たさが感じられるものの、申し分のない晴天に恵まれた去る3月19日(日)、しあわせの村の体育館において「こうべユニバーサルデザインフェアー」が開催され、多くの人で賑わいました。

 ユニバーサルデザインとは、人々が持っている様々な個性や違いに関わらず、誰もが利用しやすく、暮らしやすい社会となるよう、街や建物、もの、仕組み、サービス等を提供していこうとする考え方で、その頭文字をとって表現されている「UD」という言葉は、皆さんよく見かけられることと思います。
当日は、東京ならともかく、地方で行われるこの種のフェアーとしては異例である19社にも及ぶ企業の出展があり、障害者の自立生活を支え、社会参加を促進するための最新の福祉機器が展示されました。
いくつか紹介しますと、指が曲がり、驚くほど精巧に出来ている義手(何と握手も違和感なく出来ました)や、文字盤に文字入力をせずとも、視線だけで入力が行える意思伝達装置、また、お札の金種(何円札であるか)や、電子マネーの残高を音声で知らせる「言う吉くん」と称するウォレット等、各種障害に応じたたくさんの福祉機器が出展されていました。

 私たちが一番興味のある知的障害部門では、「だれでもワークプロ」と称する作業書作成・閲覧が可能な機器と、歯科治療をスムーズに行うための「はっするでんたー」という口腔ケアー支援の機器が展示されていました。
前者の「だれでもワークプロ」とは、就労場所での業務の際、言葉がけによる作業説明よりも視覚的な支援の方が理解しやすい知的障害者のため、写真やイラストを使った作業手順書を簡単に作成できる機器で、就労現場での迷いや混乱を軽減させ、就労に対する達成感や意欲向上につながることを目標にしています。


後者の「はっするでんたー」とは、デジタル絵カードを使って、歯科治療手順を説明し、治療に対する不安や恐怖感を軽減させるアプリで、開発者で自閉症の親でもあるさいたま市在住の金子氏が、直接ブースに立ち説明して下さいました。
同アプリ開発の背景には、自閉症の長男が、歯科治療の際に不安からパニックを起こし、ネットで拘束されたものの、更なるパニックに陥り嘔吐した食べ物をのどに詰まらせ、呼吸困難を起こしてしまったという苦い体験があったそうです。

同アプリではたくさんの絵カードや写真、動画、音声等を使って、「どんな器具を使いどんな手順で治療するのか」を事前に分かり易く説明したり、また治療中も例えば「口をゆすいで下さい」や「背もたれを倒します」といった絵カードを用いて、本人に対し充分な細かい説明がなされ、治療を受けている障害者は、先の見通しが立つことから不安感が和らぎ、落ち着いて安全な治療が受けられるそうです。


歯科治療というのは、健常者にとってもストレスの多い医療ですが、知的障害者の場合は治療の際、金子氏の長男の様に体を拘束されたり、また全身麻酔を使用したりということも珍しくありません。今後このアプリを使用する歯科医院が増え、少しでも多くの知的障害者が、普通の歯科治療が受けられるようになることを切に望みます。

この様に当事者ならではの発想が歯科治療の開発につながりましたが、当日出店の企業側も、「何に困っていて、どういったものが欲しいのか。当事者が声をあげて欲しい。それが我々が行う新たな技術開発につながっていく」と言われてました。
身体障害者と違って、一見、外観からは困り事が分かりづらい知的障害者の場合、「困り事を自ら訴えていく」ということは特に重要です。そして、この理念は紛れもなく、昨年より施行された「障害者差別解消法」における「合理的配慮」と相通じるものがあります。
生きづらさや困り事が無くなれば障害が障害で無くなるということにつながります。知的障害者の場合は、そこまでは望めないかもしれませんが、しかし、将来、多様な福祉機器がどんどん開発され、合理的配慮が当たり前に行われる社会になれば、少なくとも障害が限りなく軽減される日が、いつか訪れるのではないでしょうか。


先日、ネットで、言葉や行動で意思表示できない重度障害者の微妙な動きを先端機器で可視化することにより、気持ちを読み取っていく試みが進んでいるという記事を目にしました。これが成功すれば、非常に困難を要すると言われている、しかし、とても重要であると認識されている重度障害者の意思決定支援も可能になります。
福祉機器については、企業側にお任せするしかありませんが、もう一方の「合理的配慮」を広く社会に根付かせることは、当事者団体である私たちの使命であると思われます。

「障害者差別解消法」が施行され1年経過しましたが、未だに盲導犬や車いすの方の入店を拒否する飲食店も多く、共に生きる社会の実現にはまだまだ「道遠し」という現況です。
共生社会の構築に向けて、まず私たちのやるべきことは、社会の多くの人々に障害について正しく知っていただくことです。そのために今年度は、以前からこのコーナーでも触れておりますが体験型啓発活動である「キャラバン隊」の準備を進めたいと思います。この活動は、いろいろな場所に出向き、「知的障害者とは・・・」と、こちらから一方的に語りかけるのではなく、実際に体験・参加していただき、楽しみながら障害特性を伝えていきます。詳しくは、また次回のひとりごとで・・・。
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