fc2ブログ
第415号~支援学校・学級の廃止?それだけで解決することではありません。~
2022 / 10 / 19 ( Wed )
 まず始めは、神戸市からのお知らせで、災害時に向けたヘルプカードの活用についてのお願いです。6~7ページに掲載しております。
 街中を歩いていると、リュックやカバンにヘルプマークを付けている方はよく見かけるようになりましたが、ヘルプマーク配布と同時期に、神戸市が製作したヘルプカードを会員子女の皆さんは利用されているでしょうか?
 このヘルプカードは、災害時や日常生活の中で困った時に、障害者が周囲への理解や支援を求めるために提示するカードなのですが、このカードの存在を、まだ知らないという障害者もいるそうで、この度、神戸市より、市内の障害福祉サービス事業所に対し、周知啓発のご協力のお願いの文書が発出されました。

 困った時に、周囲の人に助けを求めるという事は、知的障害者にとって至難の業です。
それは、仮に、ある程度の会話ができる方でも、いろいろなことを的確に伝えることが非常に難しいためです。しかし、このカードは、外側には何をしてほしいかを明記し、そして、内側には、様々な個人情報(書ける範囲内の)が記載できるようになっています。
 各地で、地震や台風、大雨等、自然災害が多発する昨今、知的障害者にとって、このカードは必需品になると思います。区役所をはじめ、様々な場所で配布されているようです。
「備えあれば憂いなし」と言いますが、必要事項を記入し是非お子さんに持たせてあげて下さい。

 次です。最近、大きな話題になっている出来事について、少し考えてみたいと思います。
 日本が2014年に締結した「障害者権利条約」をめぐり、国連が初めて、日本政府に対して、改善勧告を出しました。この中で、特筆すべきこととしてお話ししたいのは、障害児を分離した「特別支援教育」の中止を要請したことです。勧告に法的拘束力はありませんが、日本政府には今後の法改正などで、この勧告にそった対応が求められます。
少し硬い話になってしまいましたが、皆さんは、「障害者権利条約」を覚えておられますか?

「障害者権利条約」とは、「障害者の人権や基本的自由の享有を確保し、障害者の固有の尊厳の尊重を促進するため・・・・。」と、何だか分かりづらい単語が羅列されていて、読むことが嫌になってしまいますが、簡単に言うと、「障害者の権利を守り、差別を禁止するために、国が取り組むべきことを定めた条約」で、障害者に関する初めての国際条約となります。
この条約は、2006年12月、国連総会で採択(意見・案などを良いものとして選び取ること)され、2008年に正式に発効(始まった)されましたが、同条約の締結国(約束した、同意した国)には、市民的・政治的な権利や、教育・保健・労働・雇用の権利、社会保障、余暇活動へのアクセス等、様々な分野における障害者政策が求められます。
日本では、「障害者基本法」の改正や、「障害者総合支援法」の成立、「障害者差別解消法」の成立等、国内法を整備した上で、2014年に同条約を締結しました。
そして、締結国は、国内での障害者政策の取り組み状況について、2年以内に、「国連障害者権利委員会」(以下:権利委)という国際的な組織に報告することになっていて、それを受け、権利委による審査(条約が守られているかどうかチェックする)が行われます。

日本政府に対する審査は、コロナ禍の影響で随分遅れましたが、本年8月22・23日の両日にスイス・ジュネーブにある国連本部にて行われました。
審査には、他国に比べ、異例の規模となる約100人の障害者や家族らが日本から現地に渡航し、権利委に課題を伝えたり、日本政府との議論を傍聴したりと積極的な動きが為されたようです。
そして、そんな当事者たちの様々な意見も加味されたであろうと言われている、日本政府への、障害者政策の改善点についての勧告が、9月9日、発表されました。

その中の一つが「特別支援教育の中止」を求めるもので、内容は、「障害を持つすべての児童が、どの教育レベルでも合理的配慮や個別支援を受けられること、質の高いインクルーシブ教育の実現に向けて国家を挙げて計画し動くこと」というものです。
しかし、特別支援教育を中止し、障害のある無しに関わらず、学びの場は通常学級のみにするということが、障害者権利条約が謳う「障害者の権利を守り、差別を禁止する」という理念に、果たしてつながっていくのでしょうか?むしろ、安易な統合で多くの問題を引き起こすということは、火を見るよりも明らかです。

通常教育のみの現場においては、教員を増やすことや、障害者一人一人に配慮が為されることが最低限必要となりますが、果たしてそれが可能なのでしょうか。更には、共に学ぶ児童・生徒に対し、インクルーシブ教育への理解の浸透も大変重要となってきます。そういった様々な課題がクリアーされなければ、通常教育一本化にする意味は全くなく、弊害しか生まれません。
何の配慮も工夫も支援もされずに、ただ単に一緒に過ごすことは、クラスの一員ではなく、単なる「お客様」でしかなく、決して「共生」と呼べるものではありません。
当たり前のことですが、障害者にも学ぶ権利はあります。それを実現するためには、それぞれの発達に応じた教育が必要です。しかし、統合教育一本では、その権利が奪われてしまいます。
障害者自身の可能性を最大限伸ばすためにも、分けた教育は絶対に必要であり、それは、決して差別に値するものではないと思います。

そして、一番重要な事は、どこで学びたいのか、決めるのは、親でもなく、教師でもなく、教育委員会でもなく、ましてや、国連でもなく、あくまで本人であるべきなのです。
その上で、それを拒まない教育、そのために支援する土壌づくりこそが、障害者権利条約の目指す真の理念であると思います。
この度の国連の勧告を評価する団体・識者も多いようですが、「共に学ぶ」という真の意味を今一度考え、何より、本人の気持ちを最優先する、そして、選択肢のある教育現場になることを強く願います。
なお、全国手をつなぐ育成会連合会(以下:全育連)では、対日審査が行われたスイス・ジュネーブには、田中専務が同行されました。

国連の勧告に対する全育連の今後の対応についてお伝えします。
あまり、報道されていませんが、この勧告は、実は、英文で発表されていて、現時点(10月3日現在)においては、政府公定訳がまだ出ておりません。現在、発出されているのは、民間団体の仮訳のみであるそうです。仮訳のままで動いてしまうと、オフィシャルな対応が出来ないためまずは、仮作業として、知的障害分野に関わる内容の精査を行い、その後、三役会等で育成会としての考え方の方向性を調整・協議した上で示されるものと思われます。 (会長 後藤久美子)
スポンサーサイト



20 : 54 : 34 | 会長のひとりごと | トラックバック(0) | コメント(0) | page top
| ホーム |