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第427号~日中活動の場を探している方は、一度体験してみませんか! そして、随分迷いましたが、やはり書くことにしました。~
2023 / 10 / 22 ( Sun )
 まず始めに、日中活動の場を探している方々へ、「親子体験(在宅者)事業」のお知らせです。
 これは、当会が母体となって設立した「社会福祉法人 新緑福祉会」が運営する法人内の各事業所において、親子で1日体験していただくという事業です。

 夏休みには、支援学校高等部の方を対象に受け入れを行いましたが、多くの方にご参加いただき、好評を得ることができました。
 高等部をすでに卒業された「在宅」の方については、年間を通した受け入れを行っております。事業所を退所した、就職していたが離職した等で、現在、在宅であるという方はもちろんですが、新緑福祉会の事業所の体験を一度してみたいと言う方等、ぜひご参加いただけたらと思います。
 詳しくは、6~7ページに掲載していますので、ご覧下さい。

 次です。今月号のメインとなります。今年の夏は、異様なほど暑かったですが、暑い最中に、神戸市西区で起きた「6歳児死亡事件」について触れたいと思います。
 この事件は、「身近な神戸市で起きた」、「容疑者は全員知的障害者」ということから、新聞やテレビ等、マスメディアを通して、ご覧になった方も大勢おられることと思います。
 8月末、「守れなかった命」と題して、神戸新聞誌上において特集記事が組まれ、数回にわたって掲載されました。その記事を中心に事件を振り返り、考えてみたいと思います。
 現在、神戸市では、なぜ、穂坂修(なお)ちゃんを救えなかったのか、事実の把握や発生原因の分析、そして必要な再発防止策を検討するため、外部の有識者による第3者委員会が進められています。非公開のため進捗状況は分かりませんが、メンバーは大学の先生、社会福祉士である弁護士、小児科医、科学警察研究所 犯罪行動科学部部長と、多分野の方々で構成されています。
 修ちゃんの母親の沙喜容疑者は、特殊な家庭環境で育ちました。沙喜容疑者を含む兄弟姉妹5人は全て知的障害者で、療育手帳を所持していました。

 当初、5人は母親と共に、神戸市垂水区の団地で暮らしていたそうですが、母親からは家庭内で、日々虐待を受けていました。特に、その対象になったのが、長女の沙喜容疑者、次男の大地容疑者、そして、その間にいた長男です。(大地容疑者の下の双子の姉妹についての情報は殆どありません。また、長男は、その後、家を出て暮らしています。)
 母親(修ちゃんの祖母)の虐待は凄まじく、①身体的虐待…棒で身体のあちこちを殴る、煙草を押し付ける等で、歯が折れて歯肉に刺さっていたり、手がグローブのように腫れあがっていたこともあった、 ②心理的虐待…怒鳴りつける等、 ③ネグレクト…母親は留守が多く、家事は沙喜容疑者が担っていた、1週間同じ服を着て、学校では臭いといじめられた、服はボロボロ、冬でも半袖半ズボン等、 ④経済的虐待…母親はパチンコによる浪費等を長きにわたり行っていた・・・というように、「障害者虐待防止法」の5類型のうち、実に4類型の虐待が、穂坂家では、日常茶飯事にわたり行われていました。

 父親は不明で、一人親世帯です。全員が生活保護を受けていて、障害基礎年金も受給していたそうですが、しかし、母親のパチンコ癖が原因なのか、困窮世帯で、ガスは早くから止められていました。そして、部屋の中はゴミ屋敷状態、母親は玩具代わりに、うさぎ等の様々な生き物を子供たちに与え世話をさせた、しかし、子供達だけでは充分な世話が出来ずに死んでしまう、結果、たくさんのゴミや糞尿の臭いと共に、死骸がもたらす悪臭が散乱し、近所からは多くの苦情が噴出、家族は団地を追い出され、事件が起こった神戸市西区に転居したのです。
家庭養育力が極端に低く、複合的リスクを抱えていたこの一家を、そして、劣悪で過酷な環境で育った兄弟姉妹を、どうして誰も救うことができなかったのでしょうか。

修ちゃんを殺め、加害者となってしまった4人ですが、同時に、間違いなく被害者でもあったのです。「彼らはたまたま死ななかっただけ・・」と言う、近所の方の言葉が、全てを物語っています。30年前に、もし、彼らを救うことが出来ていたら、何らかの支援があれば、修ちゃんの痛ましい事件は起こらなかったと思います。
修ちゃんの事件については、「こども家庭局」が矢面に立たされていますが、30年前、「児童担当」はもちろん、子供たちが最初に一歩踏み出した学びの場である「学校教育」、そして、「障害福祉」、この三者が連携し、この家庭を支援することが何故出来なかったのでしょうか。

正に「縦割り行政」の弊害なのかもしれませんが、何故、この様な家庭を放置していたのか、そして何故、兄弟姉妹を救えなかったのか、修ちゃんの事件と同じく、第三者委員会を設置し、検証することを強く望みます。
4人は殺人容疑などで逮捕され、兵庫県警による慎重な聴取が進められているそうですが、「迎合性」があるとして、4人の供述内容は、なかなか表に出ていません。供述内容がコロコロ変わり(知的障害者の「あるある」ですが)、県警も手を焼いているということだと思います。

そして、現在、刑事責任を問えるか否かを判断するための鑑定留置が続いているそうです。
殺意や、責任能力や、善悪の判断、これらが容疑者達にあったのか否かが問われ、有罪、或いは、無罪の結論が出されるものと思われます。
事件発覚直後からインターネット上では、知的障害者に対する差別偏見に満ちた書き込みが後を絶ちませんでした。結論が出るまでには、かなりの時間を要すると思いますが、どちらの結果になったとしても、「やまゆり園」事件以上の根強い差別偏見の書き込みが拡散すると思います。何故なら、今回は、被害者ではなく、加害者の立場にあるのですから・・・。

最近のニュースは、ジャニー喜多川氏の性加害問題で持ちきりで、人権擁護、児童養護という事が盛んに言われています。被害にあった当時の少年たちは、遅まきながら声をあげる事が叶いました。やっとヘルプサインが出せる環境になったのです。
穂坂家の兄弟姉妹は、知的障害ゆえに「助けて」と声をあげることは出来ませんでした。
大地容疑者のエピソードですが、横断歩道の前で座りこんでいた小学生の頃の彼は、登下校の際に、見守り活動をされていた保護者の手や腕に数回かみついたことがあったそうです。
その方は、「学校にも行きたくないし、家にも帰りたくない。そうした行動でしか意思表示が出来なかったんだと思う」と述べておられます。

この行為こそが、大地容疑者の「助けて」というヘルプサインであったと思います。もう一度繰り返します。なぜ修ちゃんを救えなかったのか、そして、なぜ穂坂家の子どもたちを救えなかったのか、神戸市はこの事実を重く受け止め、この教訓を活かしたシステムをつくり、全国に発信していただきたいと思います。二度とこんな事件を起こさないために。(会長 後藤久美子)
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