第428号~お待たせしました! 研修会を開催いたします。大勢のご参加を! そして、旧優性保護法について考えてみたいと思います。~
2023 / 11 / 20 ( Mon ) 本誌9月号でもお知らせいたしましたが、近い将来、大きく変わるであろうと言われている「成年後見制度」について、全国手をつなぐ育成会連合会(以下:全育連)の又村事務局長兼常務理事をお招きし、お話ししていただきます。ご案内を本誌最終の12ページ(クリーム色用紙)に掲載しておりますのでご覧下さい。
この制度は、知的障害者にとって、金銭管理や契約の代理、そして身上保護など「親なきあと」を含めた本人の権利擁護の観点からは、大変重要で且つ必要不可欠な制度ではありますが、課題も多く、制度利用は極めて低調です。 そこで、全育連では、全国組織というスケールメリットを活かしたアンケート調査を実施、2021年度に、その報告がまとめられました。 それによりますと、制度の認知度は80%以上と非常に高い反面、実際に利用している人は10%程度に踏みとどまっているという状況で、実に90%もの人が利用には至っていないという結果が示されました。 その理由としては、①一度制度を利用すると止めることが出来ず、後見人の変更も出来ない。②財産管理が主であり、肝心の身上保護が不十分である。③多くの知的障害者の収入源が障害基礎年金である中で、月2~3万円の報酬設定は大きな負担となる。④本人の意思を十分に尊重していない後見人がいる。等が挙げられました。 一方、国では、平成28年に施行された「成年後見制度 利用促進法」に基づき、専門家会議を設置し、運用の改善を進めているところです。 この会議を含む関連の会議には、全育連の久保顧問(前会長)が委員として参画し、知的障害者の間で利用が進まない背景をアンケート結果に基づき説明する等、かねてより制度の改善を提言してこられました。制度を改善するためには民法の改正が必要となりますが、今後は、民法の改正も視野に入れた抜本的な改善が行われるものと思われます。 そのあたりについて、又村さんには、①成年後見制度の概要 ②現行の成年後見制度は何が課題なのか ③成年後見制度見直し議論の方向性 ④結局、何がどう変わりそうなのか ⑤制度の見直しは何年先になるのか・・等、大きく見直されることが確実な成年後見制度について、現行制度の概要と課題も交えて詳しく、そして、分かりやすく解説していただきます。 当会で制度を利用されている方は、10%にも満たない、おそらく一桁程度ではないかと推察します。しかし、保護者の高齢化は待った無しで進んでおり、制度の利用が急がれます。 何よりも使いやすい制度となることを期待したいと思います。 研修会は、12月26日(火)です。年末の押し迫った時期で、お忙しい事かと思いますが、大勢のご参加をお待ちしております。 次に、全育連からのお願いです。旧優性保護法裁判(強制不妊裁判)が、最高裁の大法廷で審理されることが決まりましたが、全育連では関係団体と連携し、公正な裁判を求めるための署名活動を展開することとなり、各育成会に対して協力依頼がきております。 「旧優性保護法」とは、戦後の出産ブームによる急激な人口増加を抑制することなどを目的に、昭和23年に制定された法律で、精神障害や知的障害のある人は、本人の同意がなくても強制的に不妊手術を行うことが認められていました。当時、障害や疾患は、遺伝すると考えられていたことが背景にあり、法律の条文には「不良な子孫の出生を防止する」と明記されていたのです。 「旧優性保護法」とは、まさに、「障害者は産まれてくるな」という差別的な思想から生まれた法律であり、平成8年の「母体保護法」へと改正される48年間という長きにわたって存続し、そして、この間、多くの障害者たちが不妊手術を強制されてきたのです。 5年前、知的障害のある宮城県の女性が「強制不妊手術は、差別的思想に基づくもので憲法に違反する」などとして国を訴える裁判を仙台地方裁判所に初めて起こしました。それ以来、同様の裁判が全国各地で起こされています。 これまでの判決では、多くの裁判所が、「旧優性保護法」については憲法違反と判断したものの、賠償の部分は、20年が過ぎると権利がなくなってしまうという「除斥期間」が適用されるのか、或いは、されないのかの判断で分かれており、上記の仙台地裁の判決は「除斥期間」が過ぎているとして、原告の賠償に対する訴えは退けられました。 その後、各地の裁判所でも、時間の経過を理由に原告の敗訴が続きましたが、昨年2月に大阪高裁が初めて国に賠償を命ずる判決を言い渡すと、その翌月には東京高裁も、「除斥期間」を適用しないという判断をして、国の賠償責任を認めました。 それ以降、本年3月には札幌高裁が、続いて、大阪高裁が別の裁判においても、「除斥期間」を適用せず、国の賠償責任を認めたのです。 しかし、全国で初めて提訴し、一審で敗訴となった仙台での裁判については、本年6月、仙台高裁が訴えを再び退けました。原告側は最高裁に上告しています。 高裁で判決が出され上告されている上記5件(札幌、東京、大阪2件、仙台)の裁判については、最高裁判所の大法廷に15人の裁判官全員が参加し、5件について審理されることが決まりました。今後統一した判断が示される見通しとなっています。 非常に長い説明になってしまいましたが、ご理解いただけましたでしょうか? 全育連からは、この最高裁での裁判についての署名にご協力くださいというお願いです 「旧優性保護法」は、産まれる子供の数を減らすからには、健康な子供だけが産まれるようにしよう、従って、障害者には子どもを産ませないという、まさに「優性思想」に則り策定された法律ですが、当時、障害のある家族や福祉関係者の間では、「障害者の結婚、特に子育てには大きなリスクを伴う」、また、「女性障害者の望まぬ妊娠を回避する」という違った観点から、この法律を容認する傾向があったとも言われております。時代背景を考えると致し方ないかもしれませんが、しかし、「旧優性保護法」という人権を侵害する法律が長きにわたり存続した事実こそが、現在も無くならない「差別や偏見」を作り出す要因になったと言っても過言ではありません。 「旧優性保護法」は無くなりましたが、私たちを震撼させた「津久井やまゆり園事件」等、「優性思想」は、まだまだ人々の心の中に根強く残っています。そういった意味合いからも、「強制不妊手術」の問題は、手術をさせられた障害者だけではなく、障害のある人全体の問題であると考えるべきではないでしょうか。大変に重要な局面に来ております。研修会当日は、是非とも多くの署名のご協力をお願いいたします。 (会長 後藤 久美子) スポンサーサイト
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