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第342号 会長のひとりごと 9月号より
2016 / 09 / 28 ( Wed )
~事件のもたらしたもの 「実名報道と心の闇」~
              
 先月8月号は休刊だったため、皆様とは2か月ぶりにお会いします。
さて、7月号を発刊して間もなくの26日未明、「津久井やまゆり園」において、残忍極まりない、許し難い、悲惨な事件が起きました。
事件発生から1か月が過ぎた現在も、容疑者からは反省や謝罪の言葉がなく、未だに、障害者を冒涜する言葉を繰り返していると報道されております。

事件発生後、多くの障害者団体が声明文を出しました。また、各地で追悼集会が行われ、そして大がかりなライブイベントも実施されると聞いております。この様に障害関係者の間では、事件に対する抗議と共に、これを機に、改めて命の大切さや人権を訴えようという動きが全国に広がっております。

しかし、それ以外の一般の人々はどうでしょう。連日報道されていた容疑者の特異な言動のみが心に残り、肝心の事件そのものの関心も記憶も、だんだん薄れていっている様な気がしてなりません。それは、やはり、今問題になっている「実名報道」が為されていないため、一人一人の被害者の生きてきた顔が、姿が見えないせいでしょうか。

神奈川県警は知的障害者の施設で起こった事件であり、プライバシーを保護する必要性が高く、また遺族も匿名を望んでいるとの理由から実名報道をしませんでした。これについては、差別であるとマスコミ等から多くの批判があったり、幾つかの障害者団体からも違和感があると表明されております。(全国手をつなぐ育成会連合会は実名報道に関しては表明しておりません)

確かに我が国では、事件や事故で死亡された方の氏名や情報は公表されます。そしてそれを見た我々は、犯人に怒りを覚えたり、また見ず知らずの方に手を合わせ、ご冥福をお祈りする事もあります。

しかし例えば、犯人が未成年なら当然のごとく匿名扱いです。「事件を起こした加害者は守られているのに、被害者に人権はないのですか?」ある性犯罪の事件での、遺族の悲痛な叫びです。新聞や週刊誌等には被害女性の記事が色々掲載されますが、時には、女性としての尊厳を踏みにじる内容が見受けられる事も多々あります。これは遺族にとって二重の悲しみとなります。

この事件が起こって早々に、全国の久保会長から声明文と共に本人たちへのメッセージが発信され、障害関係者のみならず一般の方々からも多くの賛同を得ました。同時に、全国手をつなぐ育成会の事務局にもたくさんの電話や手紙が寄せられました。多くは励ましや賛同だったそうですが、1割程度は容疑者と全く同じ考えで、「障害者は生きていても意味がない」や、また「税金泥棒」という言葉まで発せられたそうです。

今回の事件で、もしも実名が公表されていたら、恐らく遺族は、言われなき誹謗中傷にさらされ、二重三重の悲しみや苦しみを背負う事になると思います。そうなる事を察知し、遺族の皆さんは、やり場のない憤りや悲しみと闘いながら日々葛藤を繰り返しながら、敢えて口を閉ざしているのではないでしょうか。

障害のある子どもを持つ私たちは、今までに、多かれ少なかれ差別を受けた経験を持っています。人生の終息期を迎えてまでも、まだ差別的な言葉を浴びなければならないのでしょうか。あまりにも酷すぎます。私は、そんな遺族の方々に、氏名を公表すべきであると簡単に言うことはできません。

しかし、容疑者の異様な言動のみに着目し、犠牲になられた本人たちが忘れ去られようとしている現実には歯止めをかけなければなりません。事件の根底に流れている障害者差別を絶対に許してはなりません。傷ついた遺族・家族の方々に代わって、仲間である私たちが社会に発信していかなくてはなりません。


全国手をつなぐ育成会の機関紙「手をつなぐ」の9月号では、この事件に関する特集が組まれます。匿名発表のため被害者の実像が見えづらい中、「かけがえのない人生を生きる障害のある人の姿を社会に提示しよう」と会員に呼びかけ、写真を募集しました。10ページにわたる特集になるそうですが、「一人ひとりが大切な存在であること、ハンディを抱えながらも幸せに懸命に生きていること」そういった姿を、写真を通して多くの人に知っていただきたいと思います。

久保会長の「全力で皆さんを守る」というメッセージを発信すべきは、本来国や行政です。パフォーマンスでなく、本気で「障害者を守っていく」という姿勢をぜひ見せていただきたいのと同時に、私たちは今まで以上に強い信念で
手を携え、共生社会の実現に向けて歩んで行きたいと思います。
 タイトルに掲げたもう一つの「心の闇」については、次回にお話し致します。

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