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第352号~あれから1年・・・「共生社会」の構築に向けて~
2017 / 09 / 04 ( Mon )

  今年は空梅雨?と思いきや、ここに来て(本稿執筆の7月初旬)梅雨前線の活発な活動により記録的な大雨に見舞われている福岡・大分両県では、「大雨特別警報」が発令されました。東日本大震災での津波を思わせるような河川の氾濫に加え、土砂災害に、鉄橋陥落と、短時間で一変してしまった見るも無残な風景に、改めて自然が引き起こす猛威に恐怖すら感じました。早急な天気の回復は勿論ですが、これ以上大雨の範囲が拡がらないこと、そして最小限の被害に収まることを心から願うばかりです。

 さて、この機関紙が皆様のお手元に届く頃には、おそらく梅雨も明け、焼けつく様な日差しが降り注いでいるかと思いますが、あの日、そう、7月26日も、とても暑い1日で寝苦しい夜だったように思います。犯罪史上類を見ない、あの「津久井やまゆり園」での悲惨な事件から1年を迎えようとしています。 

先日、事件後初めて施設内部が公開されたり、また、7月24日(月)には追悼式が行われるとか・・。何もなかったかのように長きにわたって沈黙していたマスメディアも、最近「やまゆり園」関連の記事をよく取り上げるようになりました。当の「やまゆり園」では、施設再建について様々な意見が飛び交い、未だ結論が出ていない状況です。
事件発生当初は、家族会や施設を運営する「かながわ共同会」、そして現場の職員からの全面建替えの意向を受け、神奈川県は概算で60~80億円を費やし、同一敷地内での全面建替えを発表しました。ところが有識者や多くの障害者団体から、施設から地域へという障害福祉の理念に逆行している、本人の意向を重視すべき、多額の公費を負担するのだからもっと議論を等、批判が集中し、施設建替えは暗礁に乗り上げた状態になってしまいました。

神奈川県では建替え計画を検討するため、県障害者施策審議会に専門部会を設置し、議論を重ねた結果、大規模施設を造らないとする提言をまとめる方針でしたが、職員や家族から行ったヒアリングでは、従来のような大規模施設の再建を望む声が相次ぎ、園長からも同じ内容の訴えがありました。また、地域住民が出席して行われたヒアリングの際にも、同園で働いている地元の住民も多く、また以前より、園と地域とのつながりも深いため、早期に地元で再建して欲しいとの要望が出されました。

 一方で、横浜市の障害者施設の団体や近隣の社会福祉法人では、新設するグループホームでやまゆり園の入所者を受け入れようとする計画が進められ、複数の家族は関心を示しているそうです。この受け入れ計画は同園再建時の定員規模にも関わり、今後の専門部会の議論にも影響を与えるものと思われます。

相模原での事件は、犯罪史上稀にみる残忍さと共に、多くの犠牲者を出したということで、日本だけでなく海外においても大きく報道されました。
犯人は、職員体制が手薄な夜間の時間帯に園に押し入り、かつての同僚を縛りつけ、かつて寝食を共にした利用者の部屋に侵入し、そして一人ずつ名前を呼んでいき、応答のなかった重度障害者を次々に殺害していったと言われております。何という残酷な手口でしょう。亡くなった利用者、その光景を間近で見ていた利用者、彼らのその時の想い、恐怖を考えると涙があふれ、計り知れない悔しさがこみあげてきます。

国では、再発防止対策検討チームが立ち上げられ、全国手をつなぐ育成会からは田中統括が委員として出席しました。昨年秋に、中間取りまとめが発表されましたが、精神障害者の措置入院のあり方や、施設の防犯対策について等の不充分な取りまとめに終わり、田中統括いわく、肝心の職員が犯人であったことについてのやり取りは為されなかったそうです。
犯人は当初、熱意を持って同園で働き始め、「障害者はかわいい」と周囲に漏らしていたそうです。そんな犯人が、いったい何故、どこで豹変してしまったのか、その背景は何だったのか検証が必要です。「どの職員も、重度の知的障害者の支援に生気を失い疲れている。障害者は生きていても仕方がない。だから、自分が職員を救うために知的障害者を殺した」殺害動機を犯人は、こう語っていました。この供述を受け、重度者の多い支援施設の職員不足等、現場の状況やあり方についての充分な議論が何故行われなかったのでしょう。今後、本人の重度化・高齢化がますます進んでいきます。しかし障害のみならず、福祉分野においては職員不足が顕著で、現場の職員の負担も一層大きくなってくるものと思われます。第2第3のモンスターを生み出さないためにも、こういった議論を丁寧に行い、支援施設の職員体制等、改善していくことが急務であると思われます。

 そして、この事件は犯人が持っている上記の様な障害者に対する偏見や差別、いわゆる「優生思想」的な考えが浮き彫りになり、社会に大きな波紋を投げかけました。

 しかし、日本では、すでに胎児の出生前診断が普通に行われ、ダウン症等の可能性が事前に判明すると、何と90%以上の方が堕胎手術を受けていると言われております。そのせいか最近、幼児施設ではダウン症児を見かけなくなりました。
また更に驚くことに、両親の遺伝子診断で「将来の子」が予測できる方法があり、しかもそれは唾液を採取するだけで、1050種類もの病気にかかる可能性を4段階(100・50・25・0%)で表示し、大手の遺伝子検査会社が来年の開始を目指しているそうです。
障害者に対する犯人の偏った考えから起こった「やまゆり園」の事件は、多くの人に衝撃を与えましたが、では、この様な検査は問題ないのでしょうか。このまま進むと、これからの日本には障害者を含む弱者の居場所がなくなってしまいます。

しかし、病気で事故で加齢により誰しも弱者になるかもしれません。けれども誰しも一人ひとりが大切な存在なのです。この事実を受け止め、真剣に考えていかなければ、国が謳う「地域共生社会」は「絵に描いた餅」で終わってしまいます。
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